変わることのない世界で

小さな物語の断片
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昔の記憶
※古の王都:微ネタバレ



悪夢に魘され、飛び起きれば体中汗だくで嫌に鼓動が早かった。たかが夢ごときにこうも乱されるとは弱いな、と自嘲しながらカーテンを開け、外を見てみた。
うっすらと出ている月が雲を通して地上へ光を送る、そのぼやけた光にどうしようもなく苛立ちを覚えた。―原因は分かっている、あいつを彷彿とさせるからだ。



「ヴィル、僕はね馬鹿な奴が嫌いだよ」
「何度も聞いた、知ってる」
「ヴィルは賢いから好きだよ。僕の言葉をすぐ理解してくれる」
「そりゃどーも」

雲に隠れたぼやけた月のような艶やかな銀髪に、その瞳はこれ以上なく淀んだ赤をしていた。
俺より五つ上の従兄はそう言って俺に無邪気に笑いかけた。その笑みは口にしている言葉とその目には酷く不釣合いなほど無邪気で、逆に寒気を覚えた。
ジェイド、と年上にもかかわらず俺は呼び捨てにして呼んでいた。
ジェイドは歪んでいた。愛情表現も、自己表現もそのすべてが歪んでいたように思う。

「僕が頭だったら叔父さんよりもっと上手くイーラを動かすのに」
「親父は別に何も望んじゃいないからな」
「違うよ、叔父さんは下手なんだよ。あれじゃあ全ては手に入らない」

そう言うジェイドの口元は歪んでいて、それにいやな予感を覚えた。後になってそれは的中するのだが。

「ねぇ、ヴィル。ヴィルは僕を失望させないでね?もっと、上手く動かしてね」
「俺はイーラに興味なんかねぇよ」
「それでも、次の頭はヴィルになる。その時は」
「まだ先のことだろ」
「そう、だね」

あの時のジェイドの言葉はどこか含みがあった。俺はそれに気づきながらもどこかで恐怖を覚えてそれ以上深いことは聞けなかった。
歪んでいた、狂っていた。
俺はそれ以上何も聞けなかった。



「それでも、同じ血が流れてる…か」

俺は、次に会った時ジェイドを殺せるのだろうか。
殺さなければ、逆に殺られる。それは根拠のない確信。
迷ってる暇はないのだ。

その時は僕を退屈させないでよ?

頭の中で声が響いた。



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古の王都、ヴィルの過去を垣間見る
目的と代償
殺される前に殺すか、黙って殺されるか
選択は残されていない
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