変わることのない世界で

小さな物語の断片
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合縁奇縁γ

ただのアホだと陽は言うが、木月の頭が切れることは知っている。自己分析も出来ているし、何より自分の置かれている状況・環境をしっかり把握している。陽や私への接し方を見れば一目瞭然だ。陽も気づいていないわけではないだろうが、当事者だからかただの気まぐれ程度にしか思っていない。

「かずさんって一途なんだ」
「……稜、いつから木月と仲良いの」

そして、知らない間に後輩とも知り合いになっている。それも割と手懐けるのが困難なタイプの奴と。
しかも陽と仲のいい奴というあたり、なかなかに手強い。稜と陽は気が合う。似たもの同士という奴なのだろう、二人の価値観はとても良く似ている。多くのことにたいして感情が動くポイントが似てるのだ、映画や、音楽、風景や人物、重きを置いている場所が多々重なるから、稜と木月の仲が良いと言うことはつまりは陽と木月も親しくなる可能性が大いにあると言うことだ。

「あんた稜まで買収したの?」
「人聞きの悪い。偶々だよ、偶々」

わざとらしくからかうように言う木月の言動は計算が多く含まれてるが、それでも陽相手だと表情が至極自然に柔らかくなるから、特別なんだと分かる。だから下手に口出しが出来ないんだと自分でもよくわかってはいることだが、分かっているということと、その事実を受け入れ穏やかでいられるというのはまったく別問題だ。

「モテる男は大変ね」
「まあな。けど、それでこんだけ陽にくっつけるんならそれも悪くねーよ」

頭が回るから微妙なニュアンスもすぐに理解する、悔しいくらいだ。しかし面白いのは、木月は頭が切れる上かなりの策士だが、その策にはまっているのはあくまで第三者であって、陽にはほぼ通用していないところだ。最初の頃こそ腹を探ってはいたが、今となってはまったくもって意に介さない、考えていない。木月は諦めだとか、慣れだとか言っていたが実際問題そんな単純なことではないことは私だからこそ分かる。そして、その事実が木月にとってかなり大きいことであることを木月は気付いていないのだから不憫なことだ。

気にしていないのではない、警戒していないのだ。

それがどれほど大きいことか分からない木月ではないだろうに、そのこと自体に気づいていないのは何とも不憫だと思う。
そもそも、慣れはともかく、諦めで好きでもない男からの過剰とも言えるスキンシップを許したりはしないことにまだ気づけないあたり、微笑ましくさえ感じる。

「稜、木月と知り合いなの?」
「まあね。陽とのことはカズさんから聞いてるよ。中々面白いことになってるらしいじゃん」
「他人事だからって……どうにかして」
「俺非力だから無理」

後ろに木月をひっつけたまま何事もないかのように話を続ける光景は異様ではあるが、違和感を覚えないのが問題だ。稜も稜でいつも通りに接している。

「カズさんはもっとクールかと思ってた」
「俺も」
「この状況見て誰もそうは思わないよ」
「寧ろクールに戻って私から離れて」

陽の言葉に殊更くっつく木月。陽の眉間に若干皺が寄ったのがわかる。暑苦しいんだろう、恐らく。

「くっつかないでください移ります、変態が」
「移らないし、変態じゃない」
「変態かどうかはさておき、異常なくっつき方であることは否定できない」

計算された異常性、どんな気持ちで木月はいるのだろうか。或いはもう気にしていないのか。木月と稜が親しいというのなら、稜もその計算には気づいているはずだ。それでも何も言わないのは、賛同しているからなのだろう。

「好きな子にはくっついていたいじゃん?稜も分かるよな」
「分からなくはないけど、カズさんのは過剰」

稜の言葉に私と陽も大きく頷く。過剰防衛なのか、攻撃は最大の防御の口なのか。

「陽、ファイト」
「旭冷たい」

知ってるのは木月本人のみ。
決めるのは当人同士だ、私が口を出すことじゃない。だから、もう暫くは静観を決め込もう。
陽とは別の理由からくるため息をついた。


変態に恋されてしまいました5題
3.くっつかないでください移ります変態が

 確かに恋だった様より拝借

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