変わることのない世界で

小さな物語の断片
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合縁奇縁β

入学当初、女の子たちの噂の中心に木月がいたことは少なからず知っていた。聞いてもいないのに教えてくれる女の子は大勢いた。今考えると、ライバルを探し回っていたのかもしれない。顔がいいのは確かに目の保養にはなるが、そこから付き合いたいとどうして短絡的に思えるのか私には不思議でならない。分からなくはないが、性格も分からず、付き合えればという思考回路は分からない。

「いやぁ、女の子は華やかでいいね」
「華やかっていうと聞こえはいいけど、『カッコいいー、付き合いたい』なんてただのバカでしょ」

いつも通り容赦ない、けれど正論である旭の言葉を聞きながら派手な女の子たちに囲まれている木月を見る。適当に相槌を打ってはいるようだが、視線は手元の本から離さない。いつものことなのか、女の子たちは隣を陣取ると勝手にしゃべり始めていた。
奇妙な、面白い構図だと思う。
カッコいい、というより綺麗な顔立ちだとは思う。おまけに180という長身でスタイルもいい。スカウトも何度かされたことがあるらしい、とあり得そうな噂まで流れているほどだ。

「見てる分には変わってて飽きないよな、とは思うけど」
「そうね。あの輪に入ろうとは思わないけど」

しかし、あんな無愛想でも顔さえよければモテるんだものねー
そういう旭の言葉は一理あって、見ている限り相槌や愛想笑いは多少しているものの、それ以外はほぼ無表情で本を読み耽っている。
異様な雰囲気は異様なだけに見ていて飽きない。
男友達といる時はごく普通に笑い、喋っているのに相手が女の子となると途端に無表情とある。
私にはよく分からないが旭が面白がってるところを見ると馬鹿ではないらしい。
始業のチャイムが鳴ると同時に散って行く女の子たちを見送り、深い溜息を吐きながらゆっくりと歩き出した木月の姿はどこか冷めていた。

「あ、え」
「「は?」」

木月が私たちの横を通り過ぎようとした時、変な声を上げたのは紛れもなく私だ。
木月は立ち止まり、旭と怪訝な顔をしてこちらを見ているのが分かる。

「えっと、それ、発売明日じゃ」
「……明日発売だけど今日購買に置いてあったから」

私が変な声をあげてしまったのは、木月が持っていた単行本が私の大好きなシリーズの最新刊だったからだ。
呆れ顔に変わった旭と、相変わらず怪訝そうに不機嫌そうにこちらを見ている木月。当然の反応っちゃ当然の反応だろう。

「ありがとう、ひきとめて悪かったね」
「……いや」
「馬鹿の相手の後にこの馬鹿が悪かったわね」




木月が構ってくるようになったのはその半月後くらいからだ。正直、あれが原因とも思えない。




「旭、おはよう」
「……おはよう。どういう状況?」

私がカフェスペースで雑誌を捲っていると、さも当然のようにごく自然に木月が隣に腰かけた。いつもは奥の人目につき難い席に行き一人でいるのに、わざわざ私の隣に腰掛ける、その行動に私が唖然としているとにっこり笑って適当に起こして、と言うなり机に突っ伏して寝に入ってしまった。
どういう状況か聞きたくなる旭の気持ちはよくわかるが、私自身、どういう状況か把握できていないので返答に詰まる。いっそ私が聞きたいくらいだ、どういう状況か、と。

「いきなり。寧ろ私が説明してほしい」

文句をいう間もなく、理由を聞く間もなくさっさと寝に入った木月のせいで私がどんな居心地の悪い時間を過ごしたことか。何事かと好奇の視線と嫉妬羨望の混ざった視線とに一人晒され、雑誌の内容なんてどうでよくなっていた。何が書いてあるのか理解する余裕がない、という方が正しいか。
あの日以来、言葉を交わしてもいないのに出来ることならこの男の頭をかち割って思考回路を読み取ってみたい。

「まあ、とりあえず。木月、起きろ」

鞄を置くと、旭は容赦なく木月の椅子を思い切り蹴った。その衝撃で目が覚めたのか、木月はゆっくりと頭を上げた。周りの空気も変わり、こちらの動きを窺っているのが分かる。……めんどくさい。

「有瀬か」
「名前知ってて貰えて光栄だわ。で、何してんのあんた」
「ああ、広瀬に用があって」
「寝てたじゃん」

用事があるなんて話は一切聞いてないし、ましてや木月が私に用事があるとも到底思えないのだけれど。関わりを一切持ってなかった相手だ、用事があるといわれて不審に思うのは無理のない話だと思う。
旭は勿論、恐らく木月も周りがこちらの様子を窺っていることは気付いている。それなのに、何故こんな目立つ形で用事があるなどと言うのか。悪い予感しかしない。
その予感は的中し、さっさと置いて逃げればよかったと後悔することになる。

「広瀬さ、今彼氏とかいるの?」
「……いないけど。何」
「俺と付き合って」

暫く思考回路が停止した。今言われた言葉を嚥下するのに相当な時間を費やした。
どよめく周りの声はただの雑音にしか聞こえず、旭でさえ驚きをあらわにしている。

「まともに話したことのない相手と付き合う気は微塵もないんだけど」
「じゃあ俺のこと知ってよ」
「……そんな機会ないでしょ」
「毎日会いに来るから、いいだろ?よろしく、陽」

快活に笑う木月に何かを言う勢いも気力も失せる私に木月は意地悪く笑うだけだった。



あれから更に1ヶ月、また1ヶ月と経ち、もうすぐ3ヶ月。色々思うところはあるわけで。

「どうした?」
「ねえ、聞きたくないんだけど、あんたのそのフォルダ何?」

今では本当にさも当たり前のようにいる木月にいちいち突っ込むこともしなくなったが、今視界にちらりと入ってきたものを見過ごせるはずもなく、突っ込む。
ぎくりと固まった木月を見れば、それを隠しておくつもりだったことは一目瞭然だ。
木月の手からスマホを奪い取り、木月の手が届く前にフォルダを開く。

「ちょ、これ、いつ」
「この前の講義中」

フォルダの中にあったのは、紛れもない私の寝顔だった。今シャッター音なしのアプリあるから便利だよなぁ、とふざけてるとしか思えない木月の目の前で思い切り削除ボタンを押した。情けない声を出すその頭を一発叩き、返してやる。

「俺のベストショットが……」
「あんたのじゃないでしょ」
「大体突っ伏して寝てるから、なかなか撮れないんだぜー?」
「盗撮が犯罪だって知ってる?」

関係ないときっぱり言い切った木月の頭を再度叩き、溜息を吐く。華やかとは程遠い私に木月が構う理由は未だ見当が全くつかない。木月に聞いても上手くはぐらかされる。
もやもやを吐き出すように重い溜息を吐いて、じゃれてくる木月の頭を今度は力強く叩いた。

 

変態に恋されてしまいました5題
2.盗撮が犯罪って知ってますか?
 確かに恋だった様より拝借


*****************************
木月は馬鹿ではありません。アホかもですが馬鹿ではないんです
こういう流れの話は好みという名の理想です
最終的にくっつきますが←
どうやって落ちるか考え中
 
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