変わることのない世界で

小さな物語の断片
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Signal night


‐‐出かけるんじゃなかった。

街に繰り出して十分も経たない内からそう思ってしまい茜はそれは深い深いため息を吐いた。色とりどりに飾り付けられている木々と輝くイルミネーション。自分の住んでいる場所がクリスマスには賑わう名所となっているのが運の尽きだったかと今更ながら思う。街行く人々はその大半が幸せオーラを撒き散らしていて今現在フリーで目下片思い中の茜にとってみればそれは嫌がらせ以外の何者でもない‐‐とは言うものの、好き好んで外に出たのだから自分で自分に罰ゲームを課している様なものだったが。それに、茜はモテる。実際にクリスマス前には数人から告白された。にも関わらず、こうして一人でいるのはそれらをすべて断ったからなのだが。片思い中の相手以外と過ごす気はないと言う決意の表れだ。
家に帰ったら帰ったで年中仲の良い両親と姉とその恋人がいるだけなので帰る気もないわけだが。

「あれ、茜ちゃん?」
「っ、三原。何して」
「んー、バイト。ケーキの売り込み。ってか何で一人?あんなに呼び出し食らっといて」
「好きでもない女と過ごす気なんてないっつーの」

茜‐‐基、立川茜。名前は女の子のようだが178cmに64kg、元サッカー部と言う立派な男である。そして、その茜に声をかけたのは三原暁。162cmに49kg、現在はサンタクロースのコスチュームを身に纏っている正真正銘、茜の片思い中の相手である。

「へぇー、好きな子いるんだ?誘わなかったの?断られたとか?」
「うるせーよ」

バイトだ、ってきっぱり言い切ったのはお前だろ!と言いたいのをぐっと堪えて茜は暁を見た。学校ではいつもジーンズにトレーナー、と言った感じの暁のミニスカート姿は新鮮で顔が赤くなるのを必死で隠しながら何とか声を絞り出す。

「お前こそ、一人でバイトに勤しんでんじゃねーか。振られたんじゃねぇの?」
「振られてませんー。まあ告ってもいないけどね。相手モテるし?」

好きな相手がいると言う事実を突きつけられ茜は固まった。誰だよ、と問い詰めようとしたが運悪く客が来てしまい暁はその相手に回ってしまった。

「バイト、終わるの何時だよ」
「ん?売り切ったら上がり。まあ八時とか九時とかそんくらいじゃない?」

時計を見れば現在六時。
あと二、三時間かと確認して茜は勇気を振り絞って言った。

「終わったら連絡寄越せ。どーせ暇なんだろ?少し付き合え」

こんな言い方しか出来ない自分に苛立つも、暁の方は少しも気にしない感じで、と言うより突然の事に驚いているようでまじまじと茜を見ている。

「茜ちゃん?」
「何だよ」
「……分かったよ。遅くなっても知らないよ?」
「別に」

ぶっきらぼうに答えて、茜は心の中でガッツポーズしながらその場を後にした。







「随分早かったな」
「あー、うん。何かオーナーが中で見てたみたいでね?待たせちゃ悪いでしょ!って早く上がらせてくれた」

後でお礼しなきゃねーと無邪気に笑う暁を見て茜は自分の胸が高鳴るのを感じた。手の中にはさっき購入したばかりのプレゼント用のネックレス。姉に知識を無駄に仕込まれていた分それほど迷わずに用意できたのは良かった。玉砕するのは目に見えている。けれど用意せずにはいられなかったのは茜がロマンチストだからだろう。
いつ切り出そうか、いつ言おうか。
街を歩きながらそんなことばかり考えていると不意に暁が立ち止まり茜を真正面から捉えた。

「何だよ」
「ねー、茜ちゃん。茜ちゃんは何となくかもしれないけど、こんな日にあんなこと言われたら期待しちゃうよ?」
「……好きな奴いるくせに何言ってんだよ。そっちこそ期待させんじゃねーよ」
「は?何でそうなるの」

無駄に恋愛経験のある茜だ、決して疎くは無いが打ち砕かれる希望は抱きたくない。

「あのな、何で俺がわざわざお前のバイト先の近くにいたと思ってるの?わざわざ告白断ってまでさ。気付けよ」
「……言わせて貰うけど、じゃあ何で私がわざわざバイト後にあんたに会ってると思ってるの?自分がモテるって自覚ある?」

お互いに顔を見合わせると、二人とも真っ赤でそれでもどこか嬉しそうで。

「ったく馬鹿みてぇ。んじゃあ、デートと仕切りなおしますか」
「うん。エスコートよろしく、茜ちゃん」
「……とりあえずその“茜ちゃん”ってのやめろ」
「あー、じゃあ“茜”?」
「っ」

名前で呼ぶと真っ赤になった茜を見て笑う暁を恨めしげな目で見る茜。それでも次の瞬間には悪戯っ子のような笑みを浮かべていた。
口を暁の耳に寄せて何かをつぶやく。真っ赤になった暁に満足げな顔を浮かべると茜はその手を取り街の中へと消えていった。




 
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ぐだぐだクリスマスSS。学校で書いてるのは秘密。
茜ちゃん、と言う男の子を書きたかっただけ←
皆様、よいクリスマスを!!
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