変わることのない世界で

小さな物語の断片
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空知らぬ雨
「ぎゃははははは!お前がそんなキャラかよ」

人が散々躊躇った挙句打ち明けた悩みを目の前の男は盛大に笑った。あまりにも盛大で腹立たしくなり、私は躊躇なくその腹を思い切り殴った。キャラじゃない?そんなのは私自身が良く知っている、よく知っているがこうも思い切り笑われると腹が立つもので相手がいくら航でも、傷つく。
そりゃあ自分がそんなごくごく一般的な女の子みたいにくよくよ悩んでるなんて柄じゃないのは、十分分かってる。けどどうにもならないことだってあるわけで。とにかくどこかにぶちまけたくて、うじうじしている自分が腹立たしくて仕方ない。
腹を押さえて蹲った航を横目に私はまた物思いに耽る。本当にめんどくさい生き物だと思う、人間――特に女って。

「李雨、お前少しは……」
「手加減ならしたけど、温かった?」

にっこり笑って言えば反論してこないことを知っている。それは他の人がしてこないのとは意味が違う、他の人が恐れてしてこないのなら航は無言の懇願を察してくれてるからだ。
これ以上この件に関しては追求するな、しても無意味だ。
と。航は正直に言ってしまえば結構酷いやつだと思う。なまじ顔がいいから中々にモテる、そのことを自覚していながら誰にでも平等に接し、特に女の子には優しく接する。それが女の子をその気にさせると、期待させると知っていながら対応を変えずそして深入りしようとする子、不必要に近づいてくる子は最終的に容赦なく突き放す。女の子の性質を理解していながらそれを気にして行動することはなく、あくまで自分を貫く。
言葉だって乱暴で普通に酷いことを言うくせに、本当は優しくて、憎めない。誰にでもそうではなく、自分が認めた人間は酷く大切に、真摯に向かい合ってることを知ってるから。

「あのな、考えすぎなんだよ。考えすぎて動けなくなるくらいなら何も考えずに即座に動いちまえばいいんだよ」
「それでも考えちゃう場合は?」
「考えることを放棄して本能の赴くまま動いちまえばいいだろ。或いは考えながらそれでも動いちまうか」

何かを変えたきゃ、何かを求めるなら動くしかないだろ。
航はさも当たり前のように、何ともないことのように言ったがそれが言葉で言うほど容易ではないことを知っているはずだ。それでも口に出来るのは航の強さなのだろうけれど。

「大体、らしくねーんだよ。キモい……ってえっ」
「黙れ、この女たらし。今までの経歴と流れてる噂と第一印象とぜーんぶ碓氷に言うぞ、このヘタレ」

拳骨を思い切り落としてやる。たらしでどうでもいい子には物凄く白状で適当に扱うくせに、一途でこれ以上なく大切に扱って告白すら出来てないと言う現状と風評とのギャップ。碓氷がそれに気づいているかどうかは別として、優しい、ということには気づいているから航もまだ救われる。

「俺の、ことより、お前のことだろ」
「あんたがいけないんでしょ。ったくめんどくさい男だなぁ」
「お前にめんどくさい言われたくない」
「めんどくさいのが女なの」
「開き直るな」

そうは言われても事実そうなのだから仕方ない。大体航だって毎回毎回女の子とごだごだになる度に言ってるじゃん、女ってどうしてああもめんどくさいんだ、って。だからそんなのは今更だろうに、私が女というカテゴリーにしっかり入ってたらの話ではあるけれど。
男だろうと女だろうと恋愛が絡むということはそれだけでめんどくさくなるものなのかもしれない、いや、めんどくさくなるものなのだろう。一人の、個人の問題ではなくなるわけだし自分ひとりではどうにもならないことが圧倒的に多くなるから。

「なら俺と付き合うか?」
「やだな、もう付き合ってるじゃん。友達として」
「いや、そうじゃなくて。男友達として」
「何?私に性転換しろと?」
「……ごめんなさい、ちょっとした冗談です」

まったく、なに考えてるんだか。航を一瞥して残っていたアイスティーを一気に飲み干す。人気のないカフェに二人きり、傍目にはカップルに見えるのだろうか?
見えたところで何の問題も支障もないのが悲しいところではあるけれど。

「でもさー、マジでらしくねーとは思うぞ?何躊躇ってんの?怖いわけ?」
「だったら何」
「そん時はアイツに見る目がなかったってことだろ?」
「……航」
「あ、お前を彼女に選ぶ時点で見る目ねーか」

先程していた容赦をなくして思い切りその頭を殴ってやった。毎回毎回一言多いんだ、このアホ。

「冗談だって。ごめんなさい。……冗談だから気にするなよ?」
「気にしてないっつーの」
「彼女にしたらめんどくせーだろーな、お前」
「うるさい。悪かったね」
「別にいいんじゃねぇの?」
「航」
「可愛げがなくても強がりでも乱暴でも、それが李雨なんだから」
「あんたはほんっと毎回一言多い。一言ってか余計なことが多すぎる」
「バーカ。それでもそんな俺が好きなんだろ?」
「まーね。あんたもでしょ?」
「まーな。友達としてはお前は最高だよ」
「ほんっと一言余計だっての」

本当にめんどくさいと思う。恋愛も、女も。
こうやってさっぱりした友達だけで、その好意だけですめばいいのにそうも行かない。

らしくない、か

らしさって何だろう。でも確かに今の私は私らしくない。躊躇ってばかりでその場で足踏みしているだけなど、もっと動けと私がわたしを叱咤するのが目に見えるようだ。

「ま、話くらいいつでも聞いてやっから。くよくよ考えるだけなら動いちまえ」
「……おー」

考える前に、考えすぎる前に動け、か。
考えすぎてしまった私には余計な思念が纏わりついて身軽に、とは行かないだろうけど黙ってるよりはましだろう。私は大きく伸びをして航に不適に笑いかけた。
強がるような笑み、涙を隠すように消し去るように笑いかけた。
*************************************
考えすぎてしまう、動けなくなる
それでも、むりにでも動けば何か変わるのだろうか
誰も変えちゃくれない
自分で動くしかない
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