変わることのない世界で

小さな物語の断片
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強運、悪運、運命
※stigma:



晴れ渡った空には雲一つ見当たらず、遮るものがないまま陽光は容赦なく地上へと降り注いでいた。その陽光は彼の髪に当たりその金糸をきらきらと反射して輝かせている。
陽光は容赦ないが、吹き抜ける風が冷たいせいか彼の顔には疲れや暑さと言ったものは一切見えない。
長い前髪の合間から見える深い蒼はまっすぐで、吸い込まれそうになるほどだ。
前までは弟たちが祝ってくれていたこの日も今となってはひとりきりで過ごすしかない、それも身を隠しながら。

「一人で月見ながらの誕生日、か」

自嘲気味に笑うもその顔は諦めているのではなく、寧ろ生き生きとしているように思えた。絶望しているわけではなく、窮地に立たされるもそれを楽しむ余裕はまだ十分にあるらしく活路を見出しているようだった。

「……今から女の子探すのもなぁ」

追われている者らしいとは到底思えない台詞だったが、それは彼らしいと言えばらしい台詞だ。この世に生まれたことが間違いだと、彼は一度も思ったことはなかった。
たとえ今追われる身だとしても。
彼は所謂S級賞金首、上から三番目の賞金首だと言うのに生まれたことを悔いたことは一度もなかった。
自らの手が汚れようとも、生まれてきたことに感謝はすれど恨んだことはない。

「――あれ、同業者?」

と、隣の木を見てみれば男と女の二人組が夜闇に紛れるように移動していた。その手には恐らくは盗って来ただろう物品が。

「まあ、そんなところだな」
「あら、男前」
「おい。……で、あんたは月見?」
「いや、今日誕生日なんだけど振られちゃってさ」

軽く言えば、すれ違っただけの二人組は少し怪訝な顔をした後にそれでも笑って言った。

「そうなのか、おめでとさん。そのうちいいことあるさ」
「おめでとう。きっとそのうちまた出会いがあるわよ」

思わぬ祝辞に、彼は目を丸くしてその後破顔した。

「サンキュ」

月光が照らす中で別れ、彼はもう一度上を向いた。
美しく輝く月に不敵に微笑んで飛ぶ。

「星の導くままに」



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stigmaより
些細な一言が嬉しい
この命、後悔はしていない
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