変わることのない世界で

小さな物語の断片
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警視庁情報官 ハニートラップ
 今回読んだ本;警視庁情報官ハニートラップ 濱 嘉之


色仕掛けによる謀報活動―「ハニートラップ」に溺れた日本の要人は数知れず。
国防を揺るがす国家機密の流出疑惑を追う警視庁情報室トップの黒田は、漏洩 ルートを探るうちに、この「罠」の存在に気が付いたが…。
「情報は命」そう訴える公安出身の著者が放つ、日本の危機管理の甘さを衝いた警察小説の最前線。
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奪還
 今回読んだ本;奪還 麻生 幾

存在そのものが極秘の海上自衛隊特別警備隊。
彼らはアメリカ海軍シールズをも凌駕する超人的格闘・諜報術を体得し、海からの敵の侵入に備え、どこへでも上陸・強襲する。
人はどこまで「兵器」になれるのか。
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合縁奇縁ε
旭のことがあってすっかり忘れていたが、そういや、木月はモテるんだったなと今更ながらに思い知らされる。最近は特に一緒に過ごす時間が長かったからか、そういう話を聞かなかったから忘れていた。
しかしながら、タイミングも場所も何もかもが悪すぎる。
何故、今、この時期に、この場所で、このタイミングなのか。
目の前で繰り広げられている告白劇。私はバレないように息を潜めるので精一杯だ。

「ずっと、好きだったの。ずっと、いいな、って」
「だから?」

かわいらしい女の子の声に応える声は、普段よりも少し低い聞き慣れた木月の声だ。覗いた先に見えたのは、木月の後ろ姿と、可愛いと評判の女の子だ。二人並んだらさぞかし絵になるんだろうな、自虐的な思考がよぎるも耳に入ってくる声に現実に呼び戻される。緊迫した空気が流れてるのを感じながら、それでもその場から動けず――好奇心なのか、或いは恐怖からなのかは分からず――じっとただ息を潜める。告白するなら誰もいないことぐらいきちんと確認してからしてほしい、というのは現在の状況下にいる私からしたら至極当然な意見だ。

「付き合って欲しいの」
「それを、今の俺に言う?」
「広瀬さんのこと?気にしないよ、木月君のことだもん、どうせ遊びでしょ?」
「遊び、ねえ」
「違うの?でも、振り向いて貰えないなら諦めてもいいころだと思うの」

聞こえてきた自信に溢れた言葉が、先日の稜の言葉と重なり思い切り突き刺さる。遊びで恋愛するような奴じゃないことは何となく、わかる。そんな面倒事を自ら好んでするような奴ではないが、それでも未だ私を好きでいてくれる確証などどこにもない。

『諦められても知らねえよ?』

リフレインする言葉は胸を締め付け、息苦しくさえ感じる。言葉の真意が曖昧になってくる。彼女の言うことは一理ある、振り向いて貰えないから諦める、というのは流れとしては自然なことだ。自分の都合で振り回してしまっているのは事実なのだから。

「別に、諦めたからってあんたのこと好きになるわけじゃないと思うけど」
「好きにしてみせる。だから」

自信満々な彼女の声と同時に、動く気配がした。そっと覗くと、木月の懐に飛び込んでいる姿が見え、固まる。もし、私のことなど諦めていたとしたら、当然、一緒にはいられない。今までとはまた意味が違ってくる。

「……あんたに興味ねぇから。諦めろ」
「っ、酷い」
「酷い?俺は本当のこと言っただけだ。離れろ」

木月が鋭く言い放った言葉のすぐ後に、慌ただしく駆けていく音と、大きな溜息とが同時に聞こえ話が終わったのだと知る。けれど、まさか姿を現せるはずもなく、そんな元気もなくただ胸の中に残された何とも言えないもやもやとした感情を何とか落ち着けようと努めることに精一杯だった。蹲るようにしゃがみこんでいたせいもあり、だから、木月が動いたのに気付けなかった。
自分の名前を呼ぶ声に、初めてそのことに気付く。

「陽?」

思い切り反応してしまい、目がしっかりと合う、木月の顔に浮かぶ驚きの色を見て自分がどんな表情をしてるのか悟り勢い良く逃げようとするが。逃げる為の一歩を踏み出すと同時にその腕を掴まれた。予想外に強い力に驚くも振り返ることはしない、いや、出来ない。いつもとは全く違う痛いくらいの強さで掴まれた腕は、一向に解放される気配がない。

「陽、何で逃げるんだよ」
「いや、逃げれてないから。不可抗力、人がいないのを確認しない方が悪い」
「へぇ、それだけ?」
「……放して」

意地の悪い響きを持たせているくせに、普段の余裕や隙を感じさせない語気と空気に逃げ道がないことを教えられる。より強くなった力に一瞬怯めば、その隙をつかれ引き寄せられた。間近に真剣な目があり完全に逃げ道を絶たれた。聞こえてくる鼓動が、どちらのものなのかさえ分からないほど、急展開についていけず余裕ぶっていた過去が懐かしくさえなる。きっかけが欲しかったのは事実、タイミングを図っていたのも事実、けれど、こんな突然に来るとは思っていなかったのもまた事実。
さぞかし情けない、余裕のない顔をしているのだろう。

「自分が今どんな顔してるか分かってる?」
「なんとなく、予想はつく。だから」
「離さねえよ。いや、逃がさねえ」

この瞳に捕まるのが怖い、強い光、生半可じゃ飲み込まれそうで、だから確かな物にしたかった。飲み込まれないように。そう、強く惹かれるからこそ怖い。手放そうにもきっと手放せないであろう手。焦がれていた存在でもあるからこそ。

「怖い」
「それは、“遊び”かもしれないから?」
「遊べるかもしれないけど、木月は遊ばないでしょ。違うよ、最近大人しかったからもう良くなったのかもって思った。寂しさ感じてる自分に気づいて。……木月は強いから怖い」
「強い?俺が?」
「うん、木月の存在が強いから」

引き込まれるのが、飲み込まれそうで、惹きこまれるのが、呑みこまれそうで怖かった。いや、今も怖い。ひき込まれたらきっともう戻れない。それが何となく感じられるから余計に。
野生じみた強さではなく、もっと精錬された強さがある。だから、知らず知らずの内に引き寄せられる。

「強いのは陽だろ。絶対にぶれない、……強ぇ、って思うよ」
「ぶれないように考えてはいるから」
「それができる時点で十分強ぇよ。強さ故の優しさとか、気遣いとかに惹かれる。存在自体が俺にとっちゃ何よりも欲しいもんなんだよ。誰にも渡したくない。陽を俺にくれよ」

照れくさくなるほどまっすぐすぎる言葉は、けれど私に決意させるには十分でかわすことを諦めさせる。
気づいてはいたけど、欲しかった執行猶予期間は私が腹を括るための期間だ。自分の知名度を知っていたからこその大袈裟とも言えるアピールは、自身の本気が伝わらなくなるリスクを背負って私に害が及ばないようにしてくれていたからだ。

「私は安くないよ。自分を全部差し出すくらいじゃないと」

全部なんてあげない。一人で二人分背負うのは重すぎる。だから。

「お前に比べりゃ安いもんだよ。俺で良ければいくらでもやるよ」

惹きつけられる笑みで笑う木月を見て、自分の中で確かなものになっていることを確信し、手首を掴んだままの手を振り解き驚いている木月の隙をつき、その手を思い切り引く。どうなるかは明らかで。

「っ、陽?」
「好きだよ、好きだ」

呆けている木月をよそに目を見て言ってやれば耐えかねてか、目をそらされた。よく見てみれば耳は真っ赤だ。

「木月?」
「……見んじゃねぇよ」

精一杯の悪態は精一杯の強がりで。初めてこの男のことを素直に可愛い、と思った。

「さて、戻るか。長居しすぎた」
「余韻に浸る、とかねぇの?ま、いいけどさ……」

さっさと戻ろうとしたのが不服だったらしく少し拗ね気味の木月が可愛く見えてしまうあたり重症だ、自覚をしつつ足は止めない。照れくさい、というのもないわけではないが、それ以上に早く戻りたい理由があるからだ。

「今なら多分、稜の告白現場に間に合う気がするから」
「は?稜人の奴、告白するの?」
「うん、またあの馬鹿男が旭にちょっかい出してるみたいだからいい加減切れる前に、って」

少しの沈黙の後に、なら仕方ないか、と呟いたのを見ると理解してくれたらしい。若干の不満が顔に残っているのが分かるが、それなら、と分かってくれたのは嬉しい。
繋いだままの手を深く絡めて、歩き出す。少し足早に、人気は既にまばらだから人目を憚る必要性もあまりない。

「っわ」

廊下を歩いていると、いきなり木月が立ち止まり私は半ば後ろに引っ張られるような形で立ち止まらされた、否、何だと思ったのも束の間。体中に感じる温もりと唇にある感触にパニックに陥りながらも、何をされているのか理解した。理解しただけで動けはしなかったが。

「木月っ」
「陽が好きだ。大好きだ。――俺が大人しいと寂しいんだろ?」
「気のせいでした、つーか誰かに見られたら……」
「見せつけてやりゃいい。虫除けっつーことで」

アホか、と思うけれど繋いだ手は離さず。
きっかけは少しの好奇心と一冊の本だった。
あの日の会話が始まりで、本当に一瞬のすれ違いのようなものだったのに不思議だなと痛感する。
繋ぐ手の力を少し強めて歩みを再開させた。握り返す力も少し強くなった気がした。


変態に恋されてしまいました5題
5.大人しいとなんだか寂しいです

 確かに恋だった様より拝借
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合縁奇縁δ
 好きだの愛してるだの、それを木月がわざわざ声を大にして毎日のように言う理由には薄々気づいている。それでも、まだまともに向き合う気がないのは、私の中で木月という存在が確立されるまで時間が欲しいからだ。
そのことに気づいているのはきっと稜だけ。

「あれ、陽一人?」
「そーだよ。木月も、残念ながら旭もいないよ」

残念、と呟きながら隣に座る稜に食べていたお菓子を勧める。
その一つを当たり前に取り口に放り込むと、これまた当たり前のようにさも自分のことを語るように言った。

「まだ足りないわけ?」
「……もう少し、かな」
「諦められても知らねえよ?ほんと、疑り深いよな」

その時はその時で、そういう相手ではなかったと思うだけだ。木月が私の特別となりうるかどうか、一種の賭けでもある。稜にとっての旭になるのかどうか、今はその見極め時だと勝手に思っている。木月ファンが聞いたら何様だ、と言われそうだが別に好かれていることに胡坐をかいているつもりはない。最初は戸惑ったけれど、きちんと木月を見られるようになってからは私なりにきちんとあいつの言葉と、気持ちと向き合っているつもりだ。傍から見たらどう見えてるのかは知らないが、逃げているつもりも蔑ろにしているつもりも適当にあしらっているつもりも毛頭ない。

「そーゆー稜はまだ言わないの?」
「お前さ、あの旭が気づいてない、なんてありえねぇだろ?まあ、ちょっとこの前、カズさんからムカつくこと聞いたからそろそろ動きはするけどよ」

稜にしろ、きっかけが欲しいのだ。動くための後押しが。私が欲しいのは確信で、それさえ得られればきっとタイミングはいい感じで木月がくれるだろうから。

「ああ、あの馬鹿男?」
「……やっぱ知ってたか。身の程を知れっつーの」

一昨日、関わりなど殆どないだろう上級生が旭の肩を馴れ馴れしく抱き、告白したことは記憶に新しい。にっこり笑顔で毒づいた旭も鮮明に覚えている。
旭は綺麗だ、言い寄られるのも珍しくないが旭の毒舌はちょっとした名物にもなっているため、最近はいなかったように思う。或いは稜が潰してたか。

「まあ女が絶えないことでは有名だったみたいだけど、見物だったよ」
「俺は自分のことカッコいいとか自惚れるつもりはないけど、あんな馬鹿よりはマシだね」

稜が動くのが先か、或いは同時か。それはその時になってみないと分からないことではあるけれど、そう遠くない先のことであることは分かる。私がこのままでいれば、木月はまた何らかのアクションを起こすであろうことも何となく分かる。それでもタイミングを間違えたくなくて、ただ頃合いを見計らっている。稜とてこの前のことを考えればそのまま黙っているだけとは考え難い。稜の言うように、旭が全く気づいていないというのはそれ以上に考えにくく、現状維持を続ければ間違いなく旭の中での稜の株は大暴落するだろう。私以上に稜はタイミングを失えない。

「難しいよねぇ」
「難しいよなぁ。陽はいいじゃん、カズさんがあんだけ機会与えてくれてんだから。俺なんか、ぜってぇしくれねぇし」

余程のことがない限り、失敗などありえないのに相手が相手なだけ、慎重になっている稜はなるほど、私がアタックする側だったならそのまま私の姿なのだろう。なかなかに興味深いが、その反面、今の立場で良かったと痛感させられる。
余計な杞憂は要らない。

「楽しませてね」
「そんな余裕ないっつーの」

私にだって余裕があるわけではないのだが、それは別に言う必要はないだろう。人の気持ちは変わる、それを知っているからこそ悠長に構えられるわけもなく、また、気楽に構えているわけでもない。
だから、そろそろ臨戦態勢に入って構える必要があるのだ。

「だから」
「陽、ストップ。また後で。‐‐カズさん、こっち。珍しいね、今日は遅いじゃん」

いきなり話を止められ、稜の視線の先を見るとそこにはやけに眠そうにしている木月の姿があった。
あぶねぇ、と内心かなり動揺しながら平常心を必死で手繰り寄せる。

「文句なしの遅刻。何、二人きり?ずるくね?」
「今更だろ……それに、稜とは以心伝心だし?」
「陽、あんま俺を妬かせると食っちゃうぞ?」
「やめて、それ冗談に聞こえない」

冗談に聞こえないが、できるものならやってみろとも思う。それは間違いなくきっかけになるから、どちらに転ぶかは分からないけれど。
駆け引きだ、と思えど本気を出されたらきっと勝てないことも分かってる。その隙を優しさだとは思わない、最初から本気を出したら私が逃げることを知った上での隙だ。だからそれを優しさとは思わない、寧ろ罠だと感じる、絶妙に張り巡らされた罠だと。距離感を掴めなくさせる絶妙な。

「でも木月が遅刻なんて珍しいね」
「確かに……先にいた方が逃げやすいのか」
「まぁなー。くそ眠い、陽、膝貸して」
「断る。寝れば?女子除けくらいはしてあげるよ」

それを優しさとは思わない、策略だ。
その隙も、恐らくこの遅刻も。不快に思わない駆け引きは、清々しさと狡猾さが混在する。
驚いたように、柔らかく笑って眠りに落ちていく木月を見る私を知った顔で見る稜と目を合わせないように窓の外に目を向けた。



変態に恋されてしまいました5題
4.食べちゃうぞが冗談に聞こえません

 確かに恋だった様より拝借

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合縁奇縁γ

ただのアホだと陽は言うが、木月の頭が切れることは知っている。自己分析も出来ているし、何より自分の置かれている状況・環境をしっかり把握している。陽や私への接し方を見れば一目瞭然だ。陽も気づいていないわけではないだろうが、当事者だからかただの気まぐれ程度にしか思っていない。

「かずさんって一途なんだ」
「……稜、いつから木月と仲良いの」

そして、知らない間に後輩とも知り合いになっている。それも割と手懐けるのが困難なタイプの奴と。
しかも陽と仲のいい奴というあたり、なかなかに手強い。稜と陽は気が合う。似たもの同士という奴なのだろう、二人の価値観はとても良く似ている。多くのことにたいして感情が動くポイントが似てるのだ、映画や、音楽、風景や人物、重きを置いている場所が多々重なるから、稜と木月の仲が良いと言うことはつまりは陽と木月も親しくなる可能性が大いにあると言うことだ。

「あんた稜まで買収したの?」
「人聞きの悪い。偶々だよ、偶々」

わざとらしくからかうように言う木月の言動は計算が多く含まれてるが、それでも陽相手だと表情が至極自然に柔らかくなるから、特別なんだと分かる。だから下手に口出しが出来ないんだと自分でもよくわかってはいることだが、分かっているということと、その事実を受け入れ穏やかでいられるというのはまったく別問題だ。

「モテる男は大変ね」
「まあな。けど、それでこんだけ陽にくっつけるんならそれも悪くねーよ」

頭が回るから微妙なニュアンスもすぐに理解する、悔しいくらいだ。しかし面白いのは、木月は頭が切れる上かなりの策士だが、その策にはまっているのはあくまで第三者であって、陽にはほぼ通用していないところだ。最初の頃こそ腹を探ってはいたが、今となってはまったくもって意に介さない、考えていない。木月は諦めだとか、慣れだとか言っていたが実際問題そんな単純なことではないことは私だからこそ分かる。そして、その事実が木月にとってかなり大きいことであることを木月は気付いていないのだから不憫なことだ。

気にしていないのではない、警戒していないのだ。

それがどれほど大きいことか分からない木月ではないだろうに、そのこと自体に気づいていないのは何とも不憫だと思う。
そもそも、慣れはともかく、諦めで好きでもない男からの過剰とも言えるスキンシップを許したりはしないことにまだ気づけないあたり、微笑ましくさえ感じる。

「稜、木月と知り合いなの?」
「まあね。陽とのことはカズさんから聞いてるよ。中々面白いことになってるらしいじゃん」
「他人事だからって……どうにかして」
「俺非力だから無理」

後ろに木月をひっつけたまま何事もないかのように話を続ける光景は異様ではあるが、違和感を覚えないのが問題だ。稜も稜でいつも通りに接している。

「カズさんはもっとクールかと思ってた」
「俺も」
「この状況見て誰もそうは思わないよ」
「寧ろクールに戻って私から離れて」

陽の言葉に殊更くっつく木月。陽の眉間に若干皺が寄ったのがわかる。暑苦しいんだろう、恐らく。

「くっつかないでください移ります、変態が」
「移らないし、変態じゃない」
「変態かどうかはさておき、異常なくっつき方であることは否定できない」

計算された異常性、どんな気持ちで木月はいるのだろうか。或いはもう気にしていないのか。木月と稜が親しいというのなら、稜もその計算には気づいているはずだ。それでも何も言わないのは、賛同しているからなのだろう。

「好きな子にはくっついていたいじゃん?稜も分かるよな」
「分からなくはないけど、カズさんのは過剰」

稜の言葉に私と陽も大きく頷く。過剰防衛なのか、攻撃は最大の防御の口なのか。

「陽、ファイト」
「旭冷たい」

知ってるのは木月本人のみ。
決めるのは当人同士だ、私が口を出すことじゃない。だから、もう暫くは静観を決め込もう。
陽とは別の理由からくるため息をついた。


変態に恋されてしまいました5題
3.くっつかないでください移ります変態が

 確かに恋だった様より拝借

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合縁奇縁β

入学当初、女の子たちの噂の中心に木月がいたことは少なからず知っていた。聞いてもいないのに教えてくれる女の子は大勢いた。今考えると、ライバルを探し回っていたのかもしれない。顔がいいのは確かに目の保養にはなるが、そこから付き合いたいとどうして短絡的に思えるのか私には不思議でならない。分からなくはないが、性格も分からず、付き合えればという思考回路は分からない。

「いやぁ、女の子は華やかでいいね」
「華やかっていうと聞こえはいいけど、『カッコいいー、付き合いたい』なんてただのバカでしょ」

いつも通り容赦ない、けれど正論である旭の言葉を聞きながら派手な女の子たちに囲まれている木月を見る。適当に相槌を打ってはいるようだが、視線は手元の本から離さない。いつものことなのか、女の子たちは隣を陣取ると勝手にしゃべり始めていた。
奇妙な、面白い構図だと思う。
カッコいい、というより綺麗な顔立ちだとは思う。おまけに180という長身でスタイルもいい。スカウトも何度かされたことがあるらしい、とあり得そうな噂まで流れているほどだ。

「見てる分には変わってて飽きないよな、とは思うけど」
「そうね。あの輪に入ろうとは思わないけど」

しかし、あんな無愛想でも顔さえよければモテるんだものねー
そういう旭の言葉は一理あって、見ている限り相槌や愛想笑いは多少しているものの、それ以外はほぼ無表情で本を読み耽っている。
異様な雰囲気は異様なだけに見ていて飽きない。
男友達といる時はごく普通に笑い、喋っているのに相手が女の子となると途端に無表情とある。
私にはよく分からないが旭が面白がってるところを見ると馬鹿ではないらしい。
始業のチャイムが鳴ると同時に散って行く女の子たちを見送り、深い溜息を吐きながらゆっくりと歩き出した木月の姿はどこか冷めていた。

「あ、え」
「「は?」」

木月が私たちの横を通り過ぎようとした時、変な声を上げたのは紛れもなく私だ。
木月は立ち止まり、旭と怪訝な顔をしてこちらを見ているのが分かる。

「えっと、それ、発売明日じゃ」
「……明日発売だけど今日購買に置いてあったから」

私が変な声をあげてしまったのは、木月が持っていた単行本が私の大好きなシリーズの最新刊だったからだ。
呆れ顔に変わった旭と、相変わらず怪訝そうに不機嫌そうにこちらを見ている木月。当然の反応っちゃ当然の反応だろう。

「ありがとう、ひきとめて悪かったね」
「……いや」
「馬鹿の相手の後にこの馬鹿が悪かったわね」




木月が構ってくるようになったのはその半月後くらいからだ。正直、あれが原因とも思えない。




「旭、おはよう」
「……おはよう。どういう状況?」

私がカフェスペースで雑誌を捲っていると、さも当然のようにごく自然に木月が隣に腰かけた。いつもは奥の人目につき難い席に行き一人でいるのに、わざわざ私の隣に腰掛ける、その行動に私が唖然としているとにっこり笑って適当に起こして、と言うなり机に突っ伏して寝に入ってしまった。
どういう状況か聞きたくなる旭の気持ちはよくわかるが、私自身、どういう状況か把握できていないので返答に詰まる。いっそ私が聞きたいくらいだ、どういう状況か、と。

「いきなり。寧ろ私が説明してほしい」

文句をいう間もなく、理由を聞く間もなくさっさと寝に入った木月のせいで私がどんな居心地の悪い時間を過ごしたことか。何事かと好奇の視線と嫉妬羨望の混ざった視線とに一人晒され、雑誌の内容なんてどうでよくなっていた。何が書いてあるのか理解する余裕がない、という方が正しいか。
あの日以来、言葉を交わしてもいないのに出来ることならこの男の頭をかち割って思考回路を読み取ってみたい。

「まあ、とりあえず。木月、起きろ」

鞄を置くと、旭は容赦なく木月の椅子を思い切り蹴った。その衝撃で目が覚めたのか、木月はゆっくりと頭を上げた。周りの空気も変わり、こちらの動きを窺っているのが分かる。……めんどくさい。

「有瀬か」
「名前知ってて貰えて光栄だわ。で、何してんのあんた」
「ああ、広瀬に用があって」
「寝てたじゃん」

用事があるなんて話は一切聞いてないし、ましてや木月が私に用事があるとも到底思えないのだけれど。関わりを一切持ってなかった相手だ、用事があるといわれて不審に思うのは無理のない話だと思う。
旭は勿論、恐らく木月も周りがこちらの様子を窺っていることは気付いている。それなのに、何故こんな目立つ形で用事があるなどと言うのか。悪い予感しかしない。
その予感は的中し、さっさと置いて逃げればよかったと後悔することになる。

「広瀬さ、今彼氏とかいるの?」
「……いないけど。何」
「俺と付き合って」

暫く思考回路が停止した。今言われた言葉を嚥下するのに相当な時間を費やした。
どよめく周りの声はただの雑音にしか聞こえず、旭でさえ驚きをあらわにしている。

「まともに話したことのない相手と付き合う気は微塵もないんだけど」
「じゃあ俺のこと知ってよ」
「……そんな機会ないでしょ」
「毎日会いに来るから、いいだろ?よろしく、陽」

快活に笑う木月に何かを言う勢いも気力も失せる私に木月は意地悪く笑うだけだった。



あれから更に1ヶ月、また1ヶ月と経ち、もうすぐ3ヶ月。色々思うところはあるわけで。

「どうした?」
「ねえ、聞きたくないんだけど、あんたのそのフォルダ何?」

今では本当にさも当たり前のようにいる木月にいちいち突っ込むこともしなくなったが、今視界にちらりと入ってきたものを見過ごせるはずもなく、突っ込む。
ぎくりと固まった木月を見れば、それを隠しておくつもりだったことは一目瞭然だ。
木月の手からスマホを奪い取り、木月の手が届く前にフォルダを開く。

「ちょ、これ、いつ」
「この前の講義中」

フォルダの中にあったのは、紛れもない私の寝顔だった。今シャッター音なしのアプリあるから便利だよなぁ、とふざけてるとしか思えない木月の目の前で思い切り削除ボタンを押した。情けない声を出すその頭を一発叩き、返してやる。

「俺のベストショットが……」
「あんたのじゃないでしょ」
「大体突っ伏して寝てるから、なかなか撮れないんだぜー?」
「盗撮が犯罪だって知ってる?」

関係ないときっぱり言い切った木月の頭を再度叩き、溜息を吐く。華やかとは程遠い私に木月が構う理由は未だ見当が全くつかない。木月に聞いても上手くはぐらかされる。
もやもやを吐き出すように重い溜息を吐いて、じゃれてくる木月の頭を今度は力強く叩いた。

 

変態に恋されてしまいました5題
2.盗撮が犯罪って知ってますか?
 確かに恋だった様より拝借

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合縁奇縁α
高校の頃は学校の人数が多く、クラスメイトの名前を覚えることで精一杯で青春とか恋愛とか、それどころじゃなかった。だから、大学生になったら青春を謳歌してやる、と意気込んだ。
でも、それは所謂普通の、一般的な青春であって特殊な形では一切望んでいない。

「陽、おはよう」
「暑い、ウザい、離れろ」
「冷てー。でも、そんなとこも「黙れ」

朝っぱらからひっついてくる男を引きはがし、旭のところに行くといつものように苦笑交じりの笑みでおはようと言ってくれた。私もそれに返し、既に埋まりつつある席の一つについた。

「有瀬、はよ」
「おはよう、木月。今日も熱心なことで」
「――旭、いいよそんな奴ほっといて。マジ、朝っぱらから……」
「木月、良かったね。顔が良くなかったら今頃あんた陽に殺されてるわよー」

木月和沙。頭脳明晰、容姿端麗、なのに馬鹿。一年の冬頃、突如現れて私に付き纏う一言で言えば変態だ。無駄に容姿が整っているだけに、完全に無視できない自分が腹立たしい。
これでイケメンじゃなかったら、旭の言う通り再起不能にしている。
そもそもなんで私に構うのか、全力で来るならで全力で返すけど。

「陽に好かれる要因になるなら、俺この顔好きになれるわ―」
「誰も好きとは言ってない」
「照れるなって」

普通の青春とは程遠い、というか青春とは言い難い、微笑ましさとか切なさとは無縁のただのコメディだ。旭の立場なら面白いのだろうが、当事者ではまったくもって面白みの欠片もない。この状況で絡める女子がいないらしいのが幸いだ。

「いい加減離れろ、変態」

未だ背中にはりついたままの木月を肘でど突いけばすんなり離れた。退き際を下手に心得ている辺りが、尚一層たちが悪い。

「俺の精一杯のスキンシップを……」
「お前のはスキンシップじゃなくてセクハラだ」

本当、何で私にこうも構うのだろう。思い当たる節は皆無。私がその事に少なからず不安を抱いていることを知っているのは旭のみ。



変態に恋されてしまいました5題
1.スキンシップじゃなくてセクハラです
 確かに恋だった様より拝借

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短編復活
赤川 次郎,浅田 次郎,伊集院 静,北方 謙三,椎名 誠,篠田 節子,清水 義範,志水 辰夫,坂東 眞砂子,東野 圭吾,宮部 みゆき,群 ようこ,山本 文緒,唯川 恵
集英社
---
(2002-11-20)

 今回読んだ本;短編復活

「小説すばる」に掲載されてきた、膨大な数の短編小説を厳選してお届けするアンソロジー。ミステリから恋愛小説、はたまた爆笑ユーモア小説まで、とっておきの16編を集めました。
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プリンセス・トヨトミ
今回読んだ本;プリンセス・トヨトミ 万城目 学


このことは誰も知らない――四百年の長きにわたる歴史の封印を解いたのは、東京から来た会計検査院の調査官三人と大阪下町育ちの少年少女だった。
鬼の松平に知らされる真実に、どのような結論を出すのか。
秘密の扉が 開くとき、大阪が全停止する?
万城目ワールド真骨頂、驚天動地のエンターテインメント、ついに始動。特別エッセイ「なんだ坂、こんな坂、ときどき大阪」 も巻末収録。




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塩の街
評価:
有川 浩
角川書店(角川グループパブリッシング)
¥ 700
(2010-01-23)

 今回読んだ本;塩の街 有川 浩

塩が世界を埋め尽くす塩害の時代。塩は着々と街を飲み込み、社会を崩壊させようとしていた。
その崩壊寸前の東京で暮らす男と少女、秋庭と真奈。世界の片隅 で生きる2人の前には、様々な人が現れ、消えていく。だが――
「世界とか、救ってみたくない?」。ある日、そそのかすように囁く者が運命を連れてやってく る。
有川浩のデビュー作!番外編も完全収録。

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